クローバー歯科・矯正歯科 あべの天王寺院 歯科医師 永井 伸人
口呼吸を続けると歯並びにどんな影響を与えるのかをご説明します。口呼吸は全身の健康や歯周病にも繋がってきますので、子供の口元をよく観察して、お口ぽかんになっていないか気をつけてみましょう。
目次
口呼吸だと歯並びはどうなるの?
口呼吸をしていると歯列にも影響が出てきます。口呼吸の子は舌の位置が下がっていることが多く、顎やお口の周りの組織に力が入らないため、きちんと発達しにくくなります。
口呼吸を続けていると、出っ歯(上顎前突)やガタガタの歯(叢生)の原因になることがあり、更に、舌を上下の前歯の間に突き出す癖があると開咬と呼ばれる、上下の前歯の間に隙間が開いて、前歯が噛み合わない状態になることもあります。
口呼吸の子供に多い不正咬合
- 子供に多い不正咬合1.出っ歯(上顎前突)
- 子供に多い不正咬合2.叢生、八重歯
- 子供に多い不正咬合3.受け口(下顎前突)
- 子供に多い不正咬合4.開咬
口呼吸を続けると舌の位置が下がって舌根沈下になる
歯並びにあまり問題のない方は、舌が上顎全体にぴったりくっついています。舌を上顎にくっつくポジションに置くことによって、舌の力で上顎を押して大きくしていきます。
口呼吸の人は、常に口で呼吸をしているのですが、舌が上顎にくっついていては口で呼吸をすることができないので、口で呼吸をするために舌を下げて、下顎の上に舌を乗せることで呼吸をすることになります。
常に舌が下がっている状態になると、舌の力が弱くなって舌を上げられなくなり、舌根沈下という状態になります。
こうなると、上顎全体にぴったりくっつけることが出来ませんので、歯並びが悪くなります。大人で歯並びが乱れている方は、子供の頃から口呼吸をしていた方が多くおられるのではないでしょうか。
そのため、子供の歯並びをきれいにするには、口呼吸をしないように気をつける必要があるのです。
口呼吸はどうして悪いの?
口で呼吸をすることが何故悪いのでしょうか。それは、身体の免疫を下げてしまうからです。
口の中は粘膜でできていて、普通は唾液で潤っている状態です。唾液には殺菌作用があって細菌から体を守ってくれています。喉の奥にある扁桃腺も同じです。
ところが口呼吸を続けているとお口が常に開いていますので、お口の中がいつも乾燥した状態になります。口の中が乾燥すると、唾液が出にくくなりますので唾液の殺菌力が働かなくなり、扁桃腺に炎症が起こったり腫れたりします。咽頭部にも炎症が起こりやすくなって、アレルギー性鼻炎や中耳炎の原因にもなります。
高齢者で寝たきりの方は口を開けている場合が多いので、口からウイルスや細菌が気管に入り誤嚥性肺炎を起こしやすい状態です。誤嚥性肺炎は命に関わる危険な病気です。
このように、口呼吸がダメな理由は、お口の中が乾燥して唾液が出にくくなり、唾液の殺菌作用が働かないために様々な細菌が口から喉の奥へ入ってきて風邪などの病気を引き起こすということです。
口呼吸と鼻呼吸の違い
鼻呼吸の場合の呼吸の仕方
鼻呼吸の場合、空気は鼻の穴から入って鼻毛で空気の汚れを取ったあと、鼻腔で空気を温めます。その後、空気は気道を通って肺に到達します。
鼻腔で空気を温めるということは、実は身体にとってとても大事です。空気を温めなかったら、冷たい空気が気道から肺までを冷やしてしまいます。その結果、内臓まで冷えてしまい、免疫の低下や低体温の原因にもなってしまうのです。
口呼吸の場合の呼吸の仕方
口呼吸では、空気が口から入ってきます。口はものを食べるところなので、鼻と違って空気の汚れを取ったり温めるたりすることが出来ません。口から入った空気はその後、気道を通って肺に到達します。
口呼吸では、口から細菌などを含んだ汚れた空気が入ってくると、扁桃腺付近に炎症が起こって腫れやすくなってきます。
口呼吸だと歯周病になりやすいの?
口呼吸をするとお口の中は乾燥しやすい状態になります。
お口の中が乾燥すると、唾液による殺菌作用が働かないために、細菌によって歯茎が炎症を起こしてしまいます。歯茎の炎症で歯茎が赤く腫れて出血しやすくなります。つまり、歯周病の危険が出てくるのです。
初期の状態で適切なケアを受ければ、歯周病は悪化せずに済みますが、炎症が起こっている状態が続くと、歯茎に膿がたまって口臭が起こり、歯槽骨が溶けていったりします。
更に悪くなると歯がグラグラし始めてものが噛みにくくなり、最後は歯が抜けてしまいます。このように、口呼吸は、歯並びだけでなく、歯周病という深刻な問題を引き起こすことに繋がります。
お口ポカンはお顔にも影響が出る
いつも口呼吸をして口をぽかんと開け続けていると、お口の周囲が緩んで力が入らない状態になり、頬や唇の筋肉が十分に発達することが出来ません。そのため、成長するにしたがってお顔がぼんやりとした表情になることがあります。
子供の容貌にも悪影響が出る可能性がありますので、口呼吸から鼻呼吸へ改善出来るようになりましょう。
いい歯ちゃんと悪い歯ちゃん 〜口呼吸やめよう〜日本歯科医師会公式チャンネル
口呼吸の歯並びに対する影響に関するQ&A
口呼吸を続けると舌の位置が下がり、歯並びに影響を与えます。舌の力が弱まり、上顎全体に舌を押し上げる力が減少するため、歯列が乱れやすくなります。
口呼吸をする子供は、舌の位置が下がり、出っ歯(上顎前突)やガタガタの歯(叢生)の原因になることがあります。また、舌を前歯の間に突き出す癖があると開咬(前歯の間に隙間が開く)が起こる可能性もあります。
鼻呼吸を促すためには、鼻が詰まりやすい場合は鼻づまりの原因を確認し、治療を受けることが重要です。また、口呼吸を意識している場合は、鼻からゆっくりと息を吸い込む練習や口を閉じて鼻呼吸をするよう意識することが効果的です。
まとめ
子どもが口呼吸を続けると、①歯並びが悪くなる、②全身の免疫を下げる、③歯周病になりやすい、ということが起こります。口呼吸は小さい間の方がなおしやすいので、自我が芽生えてくる4才までにお口ポカンをなおすようにしましょう。