歯と口のトラブル

歯根破折での治療が増えている原因とは?

歯根破折での治療が増えている原因とは?

近年、歯科治療において「歯根破折」というトラブルが増えていることが報告されています。歯根破折が増加している背景には、加齢や生活習慣、歯周病の進行などに加え、コロナ禍でのストレスが関係しているのではないかと考えられています。歯根破折の原因とその背景、予防策や治療法についてご説明します。

歯根破折のメカニズムとは?

歯根破折とは、歯の根が割れてしまう状態を指し、多くの場合、抜歯が必要になる深刻な状態です。歯根の破折は、歯全体の機能や健康に大きな影響を与えるため、早期の診断と治療が非常に重要です。

歯根が破折すると治療が難しく、保存できる場合でも根管治療や歯の固定が必要です。しかし、歯根破折が進行すると、抜歯しか選択肢がなくなり、インプラントや入れ歯といったさらなる治療が必要になります。

コロナ禍のストレスと歯ぎしりの関係

コロナ禍においては、多くの人が生活の変化や健康への不安からストレスを感じることになりました。このストレスは、歯ぎしりや食いしばりといった習慣を悪化させる要因の一つです。ストレスが溜まると、無意識のうちに顎や歯に過度な力がかかり、就寝中に歯ぎしりをするケースが増加しています。このような歯ぎしりが続くと、歯に強い負担がかかり、特に歯根に大きなストレスが集中しやすくなります。これが歯根破折の原因となり、コロナ禍が一段落した現在でも、歯科医院における治療例の増加に繋っていると考えられています。

コロナ禍がもたらした生活環境の変化は、精神的なストレスを増やし、その結果として歯ぎしりや食いしばりによる歯根破折の症例が増加しています。多くの歯科医師が、コロナ禍以降、歯ぎしりや食いしばりによる歯のトラブルを訴える患者さんが増えたと報告しています。特に、テレワークや自宅での時間が増えたことにより、日常的なストレス解消の機会が減少し、その影響が口腔内に現れやすくなっていると考えられています。

  • ストレスによる歯ぎしりの増加
  • 長期にわたる食いしばりの習慣化
  • 睡眠中の無意識の歯ぎしりによるダメージ

歯ぎしりが歯根破折を引き起こす理由

歯ぎしりによる歯根破折

歯ぎしりは、通常の噛む力以上の負荷を歯にかけるため、歯の根や歯周組織に大きなダメージを与えます。特に長時間にわたって歯ぎしりが続くと、歯根が繰り返し強い力で圧迫され、次第にひび割れが生じます。この小さなひびが進行して歯根破折に至り、痛みや歯の機能不全を引き起こします。さらに、歯ぎしりが継続的に行われる場合、歯全体に均等な負荷がかからないため、一部の歯が集中してダメージを受けることもあり、これが破折を起こすと考えられています。

歯根破折を予防するための対策

歯根破折を防ぐためには、ストレスの管理とともに、歯ぎしりの予防が重要です。

マウスガードの使用

就寝中の歯ぎしりによる歯へのダメージを軽減するため、マウスガードを使用することが推奨されます。マウスガードが歯への過度な負荷のクッションの役割をし、歯が擦り減ったり歯根が割れるのを防ぎます。

定期的な歯科健診

定期的な健診を受けることで、歯ぎしりの兆候や歯の状態を早期に把握し、適切な対処が可能になります。

生活習慣の見直し

ストレスの原因となる要素を減らし、リラックスする時間を持つことも歯ぎしりの予防につながります。

歯根破折を予防するためにできること

歯根破折を予防するためには、毎日の歯磨きが非常に重要です。定期的な歯科健診を受け、早期に問題を発見することが大切です。また、日常的な歯磨きの習慣を見直し、歯垢をしっかり除去することで、歯根の健康を守ることができます。

  • 定期的に歯科健診を受けることが大切
  • 正しい方法での歯磨きを行う

さらに、噛む力をコントロールし、硬すぎる食べ物を避けることも、歯根破折のリスクを軽減します。特に、歯ぎしりや食いしばりがある場合は、マウスガードの使用が有効です。

早期発見と治療の重要性

歯根破折は早期に発見し、適切な治療を行うことで、歯を保存できる可能性が高まります。歯ぎしりの症状がある場合や、歯に違和感を感じた際は、早めに歯科医院を受診し、専門医による診断を受けることが重要です。また、破折の予防だけでなく、既に破折が疑われる場合でも、歯科医師が適切な対応を行うことで、抜歯を回避できる場合があります。定期的な健診と予防措置が、歯の健康を守る第一歩です。

歯根破折した場合の治療について

歯根破折の治療方法は、破折の部位や程度、歯の状態によって異なります。基本的には、破折が軽度であれば歯を保存することができる場合もありますが、重度の場合は抜歯が必要になることもあります。以下は、歯根破折の代表的な治療方法です。

1. 歯の保存が可能なケース

破折の範囲が限定的で、歯根全体にまで達していない場合、以下の方法で歯を保存できる可能性があります。

根管治療

歯根破折が軽度であれば、根管治療が選択肢に入ります。破折した部分を除去し、根管内を消毒して清潔な状態にしてから、特殊な材料で根管を封鎖する治療法です。根管治療により、破折の進行を防ぎ、歯の機能を保つことができます。

2. 破折が重度な場合

歯根破折が進行している場合や、破折が歯根全体に及んでいる場合は、保存が難しいため、以下の治療法が選ばれることが多いです。

抜歯

歯根が完全に破折してしまった場合、歯を保存するのは困難であり、抜歯が必要になります。特に歯周組織が損傷している場合や、感染が広がっている場合には抜歯が最適とされます。抜歯後には、インプラントやブリッジ、入れ歯などの補綴治療を検討することが一般的です。

インプラント

抜歯後の治療として、インプラントが選択肢にあがることが多いです。インプラントは、抜歯した部分に人工歯根を埋め込み、その上に人工の歯を装着する方法です。自然な見た目と機能を取り戻すことができ、隣接する歯に負担をかけることなく歯を補うことができます。

ブリッジや入れ歯

歯根破折により抜歯した後、インプラント以外にも、ブリッジや入れ歯といった選択肢があります。ブリッジは、両隣の健康な歯を支えにして、破折した歯の代わりに人工歯を装着する方法です。また、複数の歯が欠損している場合は、部分入れ歯が使われることもあります。

3. 治療後のケア

治療後は、歯や歯根の健康を維持するために、定期的な歯科健診が重要です。特に歯根破折が発生した後は、再発を防ぐために、歯のケアを徹底する必要があります。

まとめ

歯根破折は、特にコロナ禍におけるストレス増加による歯ぎしりなどが原因で増加しています。破折が発生した場合、早期の診断と適切な治療が重要です。軽度の破折では根管治療や歯の固定が有効ですが、重度の場合は抜歯が必要となり、その後のインプラントやブリッジなどの補綴治療が検討されます。予防のためには、定期的な歯科健診や歯磨き習慣の改善、マウスガードの使用が効果的です。

この記事の監修者
医療法人真摯会 クローバー歯科・矯正歯科 あべの天王寺院
院長 永井 伸人

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本顎咬合学会。

▶プロフィールを見る

クローバー歯科・矯正歯科あべの天王寺院

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック