クローバー歯科・矯正歯科 あべの天王寺院 歯科医師 永井 伸人
赤ちゃんが離乳食を食べやすいように、お母さんが小さく噛んでから与えると虫歯菌がうつるリスクが高まります。親から子への虫歯の感染についてご説明します。
目次
大人から赤ちゃんへ虫歯菌が感染する
生まれたばかりの赤ちゃんのお口の中には、虫歯菌や歯周病菌はいません。しかし離乳食を食べるようになって、親が自分の食べる箸で赤ちゃんに離乳食を与えたり、軽く噛んで食べ物を小さくしてから与えたりすると、親の虫歯菌が赤ちゃんに感染してしまうリスクが高まります。
歯科では親から子への感染を垂直感染と呼んで、警戒するようご説明しています。虫歯菌の親から子への垂直感染は、1歳半から2歳半くらいの間に起こることが多いため、この時期には特に注意が必要です。
お父さんやお母さんに虫歯があると赤ちゃんへの感染リスクは大
お父さんやお母さんのお口の中に虫歯が多い場合は、特に虫歯菌がうつりやすい環境といえますので、ご両親も歯科の定期健診を受けて、必要に応じて虫歯や歯周病の治療を受けるようにしましょう。
ご両親と赤ちゃんとは同じ食器を使うだけでも感染リスクがあります。特に同じ箸を使うことで、大人の唾液の中にいる細菌が赤ちゃんのお口へと感染してしまいます。
ご両親だけでなく、祖父母の方が赤ちゃんの面倒を見る場合もあると思いますので、大人の方もそれぞれの口腔内の健康を見直しましょう。大人のみなさんのお口が健康な状態であれば、それほど虫歯菌や歯周病菌への感染リスクは高くありません。
卒乳が遅いと虫歯になりやすい?
母乳だけを与えている時期には、母乳自体は虫歯の原因にはなりにくいといわれます。母乳には乳糖という糖の一種が含まれていて、糖は虫歯の原因になりますが、母乳に含まれている乳糖は濃度が低く、母乳が原因で虫歯になるのは希です。
しかし離乳食と母乳を両方口にするようになると、虫歯のリスクがあがるため、離乳食が始まったら歯のケアを丁寧に行う必要があります。
また、1歳半頃に卒乳するお子さんが多いですが、その時期に夜間の授乳をしていると、虫歯リスクが高くなります。
お子さんの離乳食が始まってからは、お口の中には食事による汚れと母乳等の糖分がたまります。寝る前の歯のケアがしっかり出来ていないと、お口の中に残っている汚れに母乳やミルクの糖分が加わり、虫歯が発生するリスクを高めてしまうことになります。
赤ちゃんの虫歯は大人からうつるのが主な原因ですが、赤ちゃんの頃のお口のケアがしっかり出来ていると、お口の中に虫歯菌がいてもすぐに虫歯になることはありませんので、まずは赤ちゃんのお口の環境を良くすることを考えましょう。
子供を虫歯にさせないためには?
虫歯になる要素として、虫歯菌、糖類を含む食べ物、歯の質があります。歯の質は生まれつき強かったり弱かったりということがあります。乳歯、永久歯ともに歯の芽は赤ちゃんがお母さんのお腹の中にいる時に既に出来ており、妊娠期のお母さんの体質や栄養バランスが赤ちゃんにも影響を与えます。
妊娠期にカルシウムをしっかり摂ってバランスの良い食事が出来たかどうかは、生まれた赤ちゃんの歯の質にまで関係しています。しかし赤ちゃんが生まれてからでも、適切な時期に歯医者でフッ素塗布を受けることで歯の質を強くすることが出来ます。
離乳食を大人が噛んでからあげてもいいのかに関するQ&A
はい、避けるべきです。大人が噛んだ離乳食を赤ちゃんに与えると、虫歯菌が感染するリスクが高まります。虫歯菌は赤ちゃんの口腔内に存在しないため、感染を避けるためには清潔な食器やスプーンを使用し、直接噛んだり口移しで与えることは避けるべきです。
はい、同じ食器を使用することで感染リスクが高まります。特に同じ箸を使うことで、大人の口腔内に存在する細菌が赤ちゃんの口に感染する可能性があります。赤ちゃんの健康を守るためには、清潔な食器を使用することや食事の際には口移しを避けることが重要です。
子供を虫歯にさせないためには、以下の対策が必要です。
1. 正しい歯磨きの習慣を身につけさせること。
2. 離乳食が始まったら、歯のケアを丁寧に行うこと。
3. 砂糖の多い食べ物や飲み物の摂取を制限すること。
4. 歯科の定期健診を受けて、虫歯や歯周病の早期発見・治療を行うこと。
5. 家族全体の口腔衛生に気を配ること。大人の口腔内の健康も重要です。
6. 卒乳後も適切な歯のケアを続けること。
まとめ
大人の歯のケアがしっかりできていれば、赤ちゃんとのスキンシップや食事の時に食べ物に唾液がついてしまっても、それほど気にする必要はありません。ご両親共に、虫歯や歯周病の予防につとめ、親子揃って健康な歯を目指しましょう。