クローバー歯科・矯正歯科 あべの天王寺院 歯科医師 永井 伸人
インプラントの治療は、全身疾患をお持ちの方などは禁忌とされており、どなたでも受けられる治療ではありませんので、インプラント治療をするにあたってどのようなことに気を付ければいいのかご紹介します。
目次
インプラント治療前に調べておくべき注意点
インプラント治療をする上で、インプラント手術が効果的に行える状態であるかどうか、事前に口腔内の環境や全身の健康状態を調べておく必要があります。その検査・診断結果によっては、インプラント治療が不適合となり治療を行えない場合があります。
ただし、他の疾患などの治療や処置を行うことによりインプラント治療が可能になることもあります。その場合は、先に治療を終えていただき、その後インプラントの治療を始めます。
手術前日・当日の注意点
安心して手術を受けるために、手術の前日・当日には以下のようなことに気をつけましょう。
- 術前1週間、術後8週間は禁煙してください。ニコチンによって血管収縮や免疫の低下など、術後の経過が悪くなることが予想されます。
- 十分な睡眠時間を確保して身体を休めましょう。
- 術前の食事は普段通りで良いのですが、静脈内鎮静法を併用する場合は、絶飲食して頂く必要がありますので、医師の指示に従って下さい。
- 女性の方は、手術当日はメイクをせずにお越しください。
- 手術当日は楽な服装でお越しください。
- 麻酔の影響があるかもしれませんので、車の運転は自分でせず、タクシーなどをお使いください。
- 手術日の当日、翌日は安静に出来るよう、ご自身のスケジュールを調整して下さい。
- 手術後は腫れや痛みが起こることがあります。翌日に消毒などを行いますので、必ず来院して下さい。
インプラントの適応条件
安全にインプラント治療を受けるための条件に付いてご説明します。
1.歯を支えるための骨が充分にあること
人工歯根(インプラント)を埋め込む場所に、高さや厚さがともに1~1.5㎝以上の骨がないとインプラント治療は行えません。ただし、骨が足りない場合は、骨の高さや厚さを補う治療をすればインプラント治療は可能です。
2.虫歯や歯周病の病気がないこと
インプラントは、歯茎と接している部分に汚れが付きやすく、炎症が起きやすくなってしまいます。そのまま放置すると、インプラントに悪影響を与えてしまいます。そのため、インプラント治療の前には虫歯や歯周病といった炎症の原因となる病気の治療が必須となります。インプラントの治療は、お口の中を清潔にした状態で開始します。
3.全身の健康状態が良好であること
インプラント治療は外科手術であるため、出血を伴う処置があり身体に大きな負担をかける恐れがあります。糖尿病や高血圧など、慢性疾患のある方は良好な状態になっていることが条件となります。
4.生活習慣が整っていること
治療中の「飲酒」や「喫煙」は、骨とインプラント体の結合に悪影響を与えてしまう可能性が高いので注意が必要です。飲酒や喫煙をしているために、インプラントの治療ができないわけではありませんが、治療中も同じように飲酒や喫煙を続けられる場合、失敗につながる可能性が高くなってしまいます。急にやめることは難しいと思いますので、治療すると決めた時をきっかけに、少しずつ減らしていくのが良いのではないかと思います。
4.金属アレルギーがないか
インプラントとアバットメントはチタンという金属で出来ています。チタンはアレルギーを起こしにくい金属ですが、稀にチタンアレルギーの方もおられます。
事前にチタンに対してアレルギーを起こさないかどうかを調べておけば、安心して手術が受けられます。
口腔内の環境を整える
インプラント治療を始める前に、歯茎の状態や咬み合わせの状態も診察します。虫歯や歯周病、咬み合わせの問題が残っていれば、インプラント治療を始める前に治療をしておきます。
歯周病の細菌は、歯を支える骨を破壊する病気です。歯周病の治療をしないままインプラント治療を行うと、インプラントを埋め込んだ周囲の骨が歯周病に感染する可能性があります。歯周病に感染してしまうと、インプラント体が抜け落ちてしまう危険があります。
咬み合わせがよくない状態でインプラントを埋入してしまうと、その後の咬み合わせに悪影響を与えてしまいます。その結果、しっかり咀嚼できないなどが原因で全身の健康が損なわれてしまいます。
インプラント治療前の精神的なストレスの解消について
インプラント治療はインプラント体と骨が定着するまでかなり長期にわたる待ち時間が発生するため、一部の患者さんにストレスや不安をもたらす可能性があります。また、手術前の不安を強く感じる患者さんもおられるでしょう。
以下に、メンタルヘルスがインプラント治療にどのように影響を及ぼすかについていくつかの点を挙げます。
1.ストレスと治癒の関係
長期にわたるストレスは身体の免疫に影響を与え、その結果治癒を遅らせる可能性があります。インプラント治療を受ける前や治療中に強いストレスがある方は、手術後の治癒に時間がかかる場合があります。、
2.不安と痛みの関係
不安は痛みを余計に強く感じさせることがありますので、手術前後は不安を感じないように過ごしましょう。
3.歯科恐怖症の方
歯科恐怖症の方には、静脈鎮静法という点滴による麻酔をお勧めしています。静脈鎮静下では、うとうと居眠りをしているような状態になりますので、手術中の不安を感じることがありません。
静脈内鎮静法をご希望の方は、早めに医院までお申し出下さい。
インプラント治療前の注意点に関するQ&A
インプラント手術が効果的に行えるかどうかを判断するために、口腔内の環境や全身の健康状態を調査する必要があります。
飲酒や喫煙は骨とインプラント体の結合や傷の治る早さに悪影響を与える可能性があり、治療の失敗につながる可能性があります。
手術前1週間、術後8週間は禁煙し、十分な睡眠を取り、指示に従って食事を摂り、手術当日はメイクをせず楽な服装で来院すること、車の運転をせず、手術日と翌日は安静にすることが必要です。
まとめ
インプラント治療を始めるにあたり、口腔内の環境や身体の健康状態を整える必要があります。それは、インプラントと骨をしっかり結合させるためであったり、長期的に安定した状態で使い続けるためでもあります。