クローバー歯科・矯正歯科 あべの天王寺院 歯科医師 永井 伸人
歯を失った時の治療法として、インプラントとブリッジがあります。その違いとメリット、デメリットについてご説明します。
骨に人工歯根を埋め込むインプラント治療
インプラントは失った歯の歯根の代わりにチタン製の人工歯根を顎骨に埋め込み、その上に被せ物(上部構造)を装着して失った歯の機能を回復させます。セラミックの上部構造なら、隣の天然歯と見た目が殆ど変わらない自然な歯が作れますので、前歯でもきれいに治ります。
インプラントのメリット
- 人工歯根があるため天然歯と同じように良く噛めるようになる
- セラミックの上部構造だと天然歯そっくりの歯を入れられる
- 人工歯根を持った独立した歯なので他の歯を削らない
- 人工歯根によって噛む力が骨に伝わるので顎の骨が痩せるのを防げる
インプラントのデメリット
- 健康保険がきかないため治療費が高額となる
- 人工歯根が骨と結合する期間が必要なので治療期間が長くなる
- 外科手術が必要なので全身疾患のある人はインプラントが出来ない
- 治療後はインプラント周囲炎の予防を徹底して行う必要がある
残っている歯にひっかけて使う入れ歯
失った歯の本数や場所によって、入れ歯には様々なタイプがあります。一般的な入れ歯では、健康な歯にクラスプと呼ばれるバネを引っ掛けて固定します。保険診療で手軽に作れるため、患者さんにとってはブリッジと並んで、歯を失った時の選択肢になります。
ただし、入れ歯に対する患者さんの満足感はそう高いものではありません。取り外し式というのは、メリットにもデメリットにもなります。入れ歯は健康な歯にひっかけて使うため、噛む力は天然歯と比べると大きく劣ります。また、バネが見えてしまうので見た目が良くないというデメリットも大きいです。
入れ歯のメリット
- 治療期間が短く治療費の負担が少ない
- 保険適用の入れ歯もあるため簡単に治療を受けることができる
- 取り外してお手入れできる
入れ歯のデメリット
- 入れ歯を固定するためのバネが見えたり、見た目が悪い場合がある
- 入れ歯を支えるためのバネをかける歯に負担がかかる(歯の寿命が短くなる)
- 装着時に違和感がある
- 噛む力が弱い
- 空気が漏れてうまく発音出来なくなる場合がある
- 使っているうちに合わなくなって調整や作り変えが必要になる
- 着脱時に気をつけないと支える歯に負担がかかってグラグラし出すことがある
- 嘔吐反射が起こる場合がある
- 取り外し式なので洗ったり保管したりの手間がかかる
入れ歯の問題点はバネをかけている歯を将来失うかもしれないということ
入れ歯の一番大きな問題点は、健康な歯にバネをかけるため、健康な歯に大きな負担がかかって、将来的にそれらの歯を失う危険があるということです。歯を失って、一時的に入れ歯で咬合を回復させることが出来たとしても、入れ歯は健康な歯にひっかけて噛める状態にしているに過ぎません。
特に入れ歯を付けたり外したりする際には、バネをかけている歯に力がかかります。入れ歯は毎食後、つまり1日3回取り外して洗うことが望ましく、最低でも1日1回は洗うようにしないと汚れが付着し、臭いが発生します。毎日数回入れ歯のバネを取り外す度に力がかかりますので、その負担の蓄積はかなり大きなものになります。
とはいえ、入れ歯を作ったのに使わない場合も問題が起こります。全ての歯は隙間なく支え合いながらきっちり並んでおり、1本でも歯がなくなると、あいたスペースに歯が倒れてきて、次第に歯並びが悪くなっていきます。
そのため、歯を失った時の治療では、失った歯のスペースを入れ歯、ブリッジ、インプラントのどれかの治療で埋め、歯としての機能を回復させることが重要になるのです。
インプラントと入れ歯の違いに関するQ&A
インプラントは自然な見た目を保つことができ、周囲の健康な歯を削らなくてもよく、噛む力が顎の骨に伝わり、骨が痩せるのを防げます。
入れ歯は健康な歯にバネをかけて固定するため、その歯に大きな負担がかかり、将来的にそれらの歯を失う危険があります。
入れ歯を頻繁に取り外すと、バネをかけている歯に力がかかり、その負担の蓄積が大きな問題となる可能性があります。
まとめ
歯を失った場合の代表的な治療である入れ歯とインプラントの違いについてご説明しました。健康な歯にバネをひっかける必要がある入れ歯と、他の歯にバネをかける必要はないが外科手術が必要なインプラント。入れ歯とインプラントのメリットとデメリットをしっかり考えながら、治療を決めましょう。