矯正歯科

シニア世代が歯列矯正を受ける際の注意点

シニア世代が歯列矯正を受ける際の注意点

「シニア世代でも歯列矯正はできるの?」と疑問に思われる方もおられるのではないでしょうか。実は、歯列矯正は年齢に関係なく可能ですが、シニア世代特有の注意点があります。シニア世代が歯列矯正を受ける際に気をつけるべきポイントをご説明します。

なぜシニア世代の歯列矯正には注意が必要なのか?

シニア世代の歯列矯正には、若年層とは異なるリスクや課題が伴います。そのため、治療を受ける前に十分な理解が必要です。

骨の代謝が低下している

  • 加齢により骨の再生力が低下し、歯の移動速度が遅くなる傾向があります。
  • 矯正の圧力による歯槽骨の吸収や損傷が起こりやすくなる可能性があります。

歯茎の健康が治療の成否を左右する

  • 歯周病がある場合、矯正治療中に症状が悪化するリスクがあります。
  • 歯茎が下がると、矯正後に歯が不安定になりやすくなります。

既存の被せ物や詰め物が影響する

  • シニア世代の方は、既に被せ物や詰め物をしていることが多く、それが矯正治療の計画に影響を与える可能性があります。
  • 補綴物が多いと、装置の装着が困難になり、治療法の選択肢が制限されることもあります。

矯正後の噛み合わせの調整が重要

  • シニア世代では、顎関節の状態も考慮する必要があります。
  • 不適切な噛み合わせは、顎関節症のリスクを高めることがあります。

このように、シニア世代の歯列矯正には特有のリスクがあり、治療前の慎重な検討が欠かせません。

シニア世代が歯列矯正を受ける場合の注意点

1. 歯や歯茎の健康状態を確認する

シニア世代の歯列矯正では、まず歯や歯茎の健康状態が非常に重要です。

歯周病の有無

  • 歯周病が進行していると、矯正治療による歯の移動が難しくなります。
  • 矯正治療を始める前に、歯周病の治療を優先する必要があります。
  • 歯周病の進行度によっては、矯正治療そのものが難しくなる場合もあります。

歯の根の状態

  • 年齢とともに歯の根が短くなっていることがあり、矯正による負担でさらに短くなる可能性があります。
  • 歯の根の吸収が進むと、歯がぐらつく原因にもなります。

被せ物や詰め物の確認

  • 矯正装置をつける前に、被せ物や詰め物がしっかりと機能しているか確認することが重要です。
  • 古くなった被せ物がある場合は、矯正前に交換が必要になることもあります。

このように、歯や歯茎の状態をしっかりチェックし、矯正治療が可能かどうかを事前に確認することが大切です。

2. 治療期間とリスクを理解する

シニア世代の歯列矯正は、若年層と比べて治療期間が長くなる可能性があります。

歯の移動が遅い

  • 加齢によって骨の代謝が低下しているため、歯の移動速度が遅くなります。
  • 矯正治療の期間が長引くと、口腔内の清掃がより難しくなり、虫歯や歯周病のリスクが高まることもあります。

矯正による歯のダメージ

  • 長期間の圧力によって歯の根が吸収されるリスクがあります。
  • 歯根吸収が進むと、最悪の場合、歯を失うこともあり得ます。

治療後のメンテナンスが必要

  • 矯正後はリテーナー(保定装置)を使用しないと、歯が元の位置に戻ってしまう可能性があります。
  • シニア世代では、保定期間が長くなる場合もあるため、継続的なケアが求められます。

これらの要因を考慮すると、シニア世代の矯正治療は計画的に進める必要があります。治療前の健康診断を行い、歯や歯茎の状態を確認しながら、最適な方法を選択することが重要です。また、治療中は定期的な健診や適切な口腔ケアを行うことで、リスクを最小限に抑え、効果的な矯正治療を受けることができます。

3. 矯正方法の選択肢を検討する

シニア世代には、さまざまな矯正方法があります。それぞれの特徴を理解し、ご自身に合った治療法を選びましょう。

ワイヤー矯正(表側・裏側)

  • 確実に歯を動かせるが、見た目が気になることも。
  • 裏側矯正は目立ちにくいが、装置が舌に当たり違和感を覚えることもある。

マウスピース矯正(インビザラインなど)

  • 目立ちにくく、取り外し可能で衛生的。ただし、自己管理が必要。
  • 長時間の装着が必要なため、ライフスタイルに合うか確認が必要。

部分矯正

  • 前歯だけなど、部分的に矯正する方法。短期間で済むことが多い。
  • 全体矯正と比べると適応できる症例が限られる。

矯正の目的やライフスタイルに合わせて、最適な方法を選ぶことが重要です。

4. 矯正中の口腔ケアを徹底する

シニア世代の矯正治療では、口腔ケアの徹底がより重要になります。

歯垢や歯石の管理

  • 矯正装置の周りに歯垢が溜まりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高まります。
  • 歯科医院での定期的なクリーニングが推奨されます。

適切な歯磨き方法を身につける

  • 矯正装置に適した歯ブラシや歯間ブラシを使用しましょう。
  • 口腔洗浄機などの補助器具を活用すると、より効果的なケアが可能です。

定期的な健診を受ける

  • 歯科医師の指導のもと、定期的に歯の状態をチェックすることが大切です。
  • 小さな異変でもすぐに対処できるよう、定期健診は欠かさないようにしましょう。

適切な口腔ケアを行うことで、矯正治療中のトラブルを防ぐことができます。

5. 費用と通院頻度を把握する

シニア世代の矯正治療では、費用や通院の頻度もしっかり考慮する必要があります。

費用について

  • 矯正治療は数十万円〜百万円単位の費用がかかることが多いです。
  • 医療費控除の対象になる場合もあるので、事前に確認しましょう。
  • 分割払いが可能な歯科医院もあるため、費用面の相談も重要です。

通院頻度について

  • ワイヤー矯正の場合は月に1回程度の調整が必要。
  • マウスピース矯正でも、定期的なチェックが必要。

費用や通院のスケジュールを事前に確認し、無理のない範囲で治療を進めることが大切です。

シニア世代に歯列矯正はおすすめ?

シニア世代の歯列矯正は、リスクを理解した上で行えば多くのメリットがあります。しかし、すべての方に適しているわけではありません。

見た目の改善

  • 歯並びが整うことで、見た目の印象が良くなります。
  • 笑顔に自信が持てるようになり、社交的な場面でも積極的になれることがあります。
  • 歯の位置が適切に整うことで、口元のシワやたるみが改善され、若々しい印象を与える効果も期待できます。

噛み合わせの改善

  • 正しい噛み合わせになることで、食事がしやすくなり、消化の負担を軽減できます。
  • 顎の負担が減り、顎関節症の予防にもつながります。
  • 噛み合わせのズレが解消されることで、肩こりや頭痛といった全身の不調が軽減されることもあります。

虫歯や歯周病の予防

  • 歯並びが悪いと歯垢が溜まりやすく、虫歯や歯周病のリスクが高くなります。
  • 矯正によって歯磨きがしやすくなることで、口腔内の健康が向上します。
  • 口腔環境が整うことで、将来的に入れ歯やインプラントの必要性を減らせる可能性があります。

注意すべき点

  • 治療期間が長くなる可能性があるため、無理なく続けられるかを考慮する必要があります。
  • 矯正中の口腔ケアが難しくなるため、定期的な健診やクリーニングが重要になります。
  • 矯正治療には一定の費用がかかるため、経済的な負担を事前に考慮し、無理のない計画を立てることが大切です。

シニア世代の方でも、歯や歯茎の健康状態をしっかりチェックし、専門医と相談しながら進めることで、安心して矯正治療を受けることができます。また、矯正治療は単なる見た目の改善だけでなく、健康維持のためにも有効な手段であることを理解しておくことが重要です。

まとめ

シニア世代の歯列矯正は、年齢を問わず可能ですが、いくつかの注意点があります。

  1. 歯や歯茎の健康状態を確認することが重要
  2. 治療期間やリスクを理解する
  3. ライフスタイルに合った矯正方法を選ぶ
  4. 矯正中の口腔ケアを徹底する
  5. 費用と通院頻度を事前に把握する

ご自身の健康状態や生活スタイルを考慮し、無理なく続けられる矯正治療を選択することが大切です。ご不安な点があれば、まずは歯科医院でご相談されることをおすすめします。

この記事の監修者
医療法人真摯会 クローバー歯科・矯正歯科 あべの天王寺院
院長 永井 伸人

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本顎咬合学会。

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クローバー歯科・矯正歯科あべの天王寺院

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