インプラント

インプラントと天然歯の噛む力の違い

インプラントと天然歯の噛む力の違い

「インプラントと天然歯では、噛む力に違いがある」と聞いたことがあるかもしれません。しかし、その違いがどれほど大きいのか、実際にどのような影響があるのか、ご存知でしょうか?インプラントと天然歯の噛む力の違いについてご説明します。

インプラントと天然歯の構造の違い

インプラントと天然歯では、根本的な構造が異なるため、噛む力にも影響を与えます。

天然歯の構造

  • 歯根膜があり、歯と骨をつなぐクッションの役割を果たす
  • 歯根膜を通じて脳に噛んだ感覚が伝わる
  • 咬合時に力を調整する機能がある

インプラントの構造

  • 人工歯根(チタン製)を骨に直接埋め込む
  • 歯根膜がないため、噛み心地がやや鈍くなる
  • 力の調整が難しく、強く噛みすぎる可能性がある

つまり、天然歯には噛む力をコントロールするメカニズムがありますが、インプラントにはそれがないため、噛みすぎたり、負担がかかりすぎることがあります。

インプラントと天然歯の噛む力の違い

では、実際にインプラントと天然歯ではどれくらい噛む力が違うのでしょうか?

噛む力の比較

一般的に、インプラントの噛む力は天然歯に比べて10〜20%ほど弱くなると言われています。これは、インプラントには歯根膜がないため、力を分散する仕組みがなく、骨に直接負荷がかかるためです。

とはいえ、殆ど天然歯と同じ程度に噛むことは出来ます。気を付けなければいけないのは、かなり硬い物を噛むときで、硬すぎる物をインプラントで噛むと、以下のようなトラブルが起きる可能性があります。

  • ・上部構造(人工歯)がひび割れる
  • ・アバットメントがゆるむ
  • ・インプラント体と顎の骨の結合が阻害され、インプラントが不安定になる

噛む感覚の違い

  • 天然歯は噛んだ時の圧力や硬さを感じ取れる
  • インプラントは噛み心地の感覚が鈍い

その結果、インプラントでは強く噛みすぎてしまうことがあるため、噛み合わせの調整が重要になります。

インプラントと天然歯の噛み心地の違いとは?

インプラントと天然歯は、噛み心地に大きな違いがあります。その主な理由は、天然歯にある「歯根膜」がインプラントには存在しないことです。

天然歯の噛み心地の特徴

天然歯には、歯根膜というクッションの役割を果たす組織があり、これが噛み心地に大きく関与しています。天然歯と骨の間にある歯根膜は、髪の毛一本程度の異物があってもしっかりと感知する優れたセンサーの役割をしています。

歯根膜の役割

  • 圧力を感知するセンサーの役割・・食べ物の硬さを感じ取り、噛む力を自動調整する
  • 衝撃を吸収するクッション機能・・硬いものを噛んだとき、適度に力を分散して歯を守る
  • 噛み応えのフィードバック・・「硬い」「柔らかい」「噛み切れる」「噛みづらい」など、食感の情報を脳に伝達

天然歯の噛み心地

  • 繊細な感覚がある(食べ物の硬さ・形状をしっかり感じる)
  • 噛む力を無意識に調整できる(強く噛みすぎない)
  • 歯や骨に無理な負担がかかりにくい

天然歯は、「硬いものを噛む時には力を抜き、柔らかいものはしっかり噛む」というように、噛む力を細かく調整できるのが特徴です。

インプラントの噛み心地の特徴

インプラントには、歯根膜が存在せず、人工の歯根が骨と直接結合しています。そのため、噛み心地が天然歯とは異なります。

インプラントの噛み心地

  • 硬さの感覚が鈍い・・食べ物の硬さを感じ取りにくく、噛みすぎてしまうことがある
  • 噛む力の調整が難しい・・歯根膜がないため、強い力で噛んでも「強すぎる」と感じにくい
  • 衝撃を和らげるクッションがない・・噛む力がダイレクトに骨に伝わるため、強く噛みすぎるとインプラント周囲の骨に負担がかかる

インプラントでの注意点

  • 噛みすぎないように意識する→ 無意識に強い力で噛みすぎると、インプラントや周囲の骨に負担がかかる
  • 咬合調整をしっかり行う→ インプラント治療後に、噛み合わせを定期的にチェックすることが重要
  • 食べ物の硬さを意識する→ 例えば、硬すぎるもの(せんべい・ナッツなど)は注意して食べる

インプラントと天然歯の噛み心地の違いをまとめると…

天然歯 インプラント
噛み心地の感覚 繊細に感じる 鈍い
噛む力の調整 自然に調整可能 自動調整ができない
噛んだときの衝撃 歯根膜が吸収 骨に直接伝わる
硬さの感知 しっかり感じる 感じにくい
噛みすぎるリスク 低い 高い

天然歯は、食べ物の硬さや食感を繊細に感じることができますが、インプラントではその感覚が鈍くなるため、強く噛みすぎるリスクがあります。

インプラントの噛む力を最大限に生かす工夫

では、インプラントでも快適に噛むためには、どのような工夫が必要でしょうか?

1. 噛み合わせの調整を徹底する

インプラントは、噛み合わせの調整(咬合調整)が特に重要です。天然歯と違い、歯根膜がないため、噛む力を自動でコントロールできません。そのため、以下の点に注意しましょう。

噛み合わせのバランスを考える

  • インプラントに過度な負担がかからないように調整する
  • 片側だけで噛むクセをつけないように意識する
  • 天然歯との高さや噛み合わせのズレを細かくチェックする

特に、片側だけで噛むクセがあると、インプラントに過剰な負担がかかり、寿命を縮める可能性があります。インプラントの耐久性を高めるためにも、両側の歯でバランスよく噛むことが大切です。

かみ合わせの調整を怠ると…?

  • インプラントに過度な負担がかかり、**インプラント周囲炎(歯ぐきの炎症)**のリスクが高まる
  • 骨にダメージが蓄積し、インプラントの脱落につながることがある
  • 他の歯への負担が増え、天然歯のすり減りが進行する可能性がある

こうしたリスクを防ぐために、定期的に歯科医院で咬合調整を行い、適切な噛み合わせを維持することが大切です。

2. 定期的なメンテナンス

インプラントはメンテナンスが非常に重要な治療です。天然歯と違い、一度トラブルが起こると自然に治ることはありません。そのため、半年に1回程度の定期検診を受けることをおすすめします。

定期メンテナンスで行うこと

  • 噛み合わせの調整(強く噛みすぎていないかを確認)
  • インプラント周囲の歯ぐきのチェック(炎症が起きていないか)
  • クリーニング(歯垢や歯石の除去で清潔に保つ)
  • レントゲン検査(インプラントの骨への定着状態を確認)

インプラントは天然歯と違い、虫歯にはなりませんが、インプラント周囲炎という歯周病に似た病気にかかるリスクがあります。これを防ぐためにも、毎日のケアと定期健診をセットで行うことが重要です。

定期メンテナンスを怠ると…

  • インプラント周囲炎になり、最悪の場合インプラントが抜け落ちることがある
  • 噛み合わせのズレが悪化し、顎関節症の原因になる可能性がある
  • インプラントの寿命が短くなり、再治療が必要になる場合がある

「インプラントを入れたら終わり」ではなく、長く快適に使うためのメンテナンスを継続することが大切です。

3. 食事の工夫で負担を減らす

インプラントの噛む力を最大限に生かすためには、食べ物の選び方や咀嚼の仕方にも気を付けるとよいでしょう。

おすすめの食事方法

  • しっかり噛んで食べる(急いで食べない)
  • 硬すぎるものは注意(せんべい・フランスパン・氷などは慎重に)
  • 食べ物を小さくカットする(噛む回数を減らすため)
  • 最初は柔らかい食べ物から慣らしていく(スープ、煮物など)

インプラントは噛む力が天然歯よりもやや弱いため、食べ物の硬さに配慮することがポイントです。

噛みすぎを防ぐためのポイント

  • 顎の疲れを感じたら、一旦休憩する
  • 硬いものを噛む際は、両側でバランスよく
  • インプラントの歯が欠けるリスクを避けるため、極端に硬い食べ物を控える

無理に硬いものを噛むと、インプラントが破損したり、骨にダメージを与える可能性があるため、日頃の食事で意識することが大切です。

4. インプラント専用のケアを取り入れる

インプラントの噛む力をしっかり維持するためには、日々のケアも重要です。適切な歯磨き習慣を身につけることで、インプラントの寿命を延ばすことができます。

おすすめのインプラントケア

  • 柔らかめの歯ブラシを使う(硬い歯ブラシは歯ぐきを傷つけやすい)
  • デンタルフロスや歯間ブラシを活用(インプラントの周囲をしっかり清掃)
  • 専用の洗口液を使用する(殺菌効果のあるものを選ぶ)

特に、インプラントと歯ぐきの境目は汚れがたまりやすいため、フロスや歯間ブラシをしっかり使うことが大切です。

ケアを怠ると…

  • インプラント周囲炎になり、歯ぐきが腫れたり出血することがある
  • インプラントがグラついてしまい、最悪の場合抜けることも

こうしたリスクを避けるためにも、日々のケアを徹底し、メンテナンスを欠かさないことが重要です。

 

インプラントの噛む力を最大限に活かすためには、以下の4つのポイントを意識しましょう。

  1. 噛み合わせの調整を徹底する
  2. 定期的なメンテナンスを欠かさない
  3. 食事の工夫で負担を減らす
  4. インプラント専用のケアを取り入れる

これらの工夫をすることで、インプラントでも快適に噛むことができ、食事を楽しむことができます。「インプラントは噛みにくいのでは?」と不安に思っている方も、しっかりとしたケアと調整をすれば安心して使用できますので、ご安心くださいね。

インプラントでもしっかり噛むためには?

「インプラントで本当にしっかり噛めるの?」と心配される患者さんもおられますが、適切な調整をすればしっかり噛むことは可能です。

  • 噛み合わせをしっかり調整する
  • 無理に硬いものを噛まない
  • 定期的なメンテナンスを行う

こうした工夫をすることで、インプラントでも快適に食事を楽しめるようになります。

まとめ

インプラントと天然歯では、噛む力や感覚に違いがあるため、適切なケアが必要です。噛む力は天然歯の方がやや強いものの、インプラントでは強く噛みすぎる傾向があります。快適に噛むためには、噛み合わせの調整、定期的なメンテナンス、硬い物を噛みすぎない、などの点を意識すれば、インプラントでもしっかり食事を楽しめます。「インプラントにしたら食べづらいかも…」と不安に思っている方も、適切なケアをすれば安心して噛むことができるので、ご安心くださいね。

この記事の監修者
医療法人真摯会 クローバー歯科・矯正歯科 あべの天王寺院
院長 永井 伸人

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本顎咬合学会。

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クローバー歯科・矯正歯科あべの天王寺院

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック