歯と口のトラブル

親知らずと顎関節症には関係がある?

親知らずと顎関節症には関係がある?

親知らずが正常に生えずに噛み合わせを乱したり、炎症を引き起こしたりすることで、顎関節に負担を与えることがあります。顎関節症は、顎の痛みや口の開閉の不具合を引き起こすため、放置すると日常生活に支障をきたす恐れがあります。親知らずと顎関節症の関連性や、抜歯のタイミング、予防策についてご説明します。

親知らずとは?

親知らずは、通常17歳から25歳頃に生えてくる第三大臼歯のことをいいます。しかし、現代人の顎は進化の過程で徐々に小さくなってきていて、親知らずが正常に生えるスペースが不足していることが多いです。その結果、以下のような問題が生じることがあります。

  • 埋伏歯・・歯茎や骨の中に埋まったまま生えてこない状態。
  • 斜めや横向きの萌出・・隣の歯を押すように斜めや横向きに生えてくる。
  • 部分萌出・・一部だけ歯茎から出ている状態で、清掃が難しくなる。

これらの状態は、虫歯や歯周病のリスクを高めるだけでなく、噛み合わせの問題や顎関節症の原因となる可能性があります。

顎関節症とは?

顎関節症は、顎の関節や周囲の筋肉に痛みや機能障害を引き起こす疾患です。主な症状として以下のようなものがあります。

  • 顎の痛みやだるさ・・特に食事や会話時に感じる。
  • 口の開閉時の異音・・カクカクとした音やクリック音がする。
  • 口の開けづらさ・・指3本分(約4cm)以上口を開けられない。

これらの症状は、日常生活に支障をきたすことがあり、早期の診断と適切な治療が求められます。

ただ、顎に違和感を感じている方の7割程度が1年以内に症状が改善しており、特別な治療は必要なかったというデータがありますので、痛みがない場合は経過観察を行う場合が多いです。症状や痛みがひどくなってきた場合は、治療が必要になります。

親知らずと顎関節症の関係性

親知らずが正常に生えていない場合、以下のような影響で顎関節症を引き起こす可能性があります。

噛み合わせのズレ

斜めや横向きに生えた親知らずが他の歯を押し、全体の歯並びを乱すことで噛み合わせが悪化します。その結果、顎の片側に過度な負担がかかり、顎関節症を発症することがあります。

片側咀嚼の習慣

親知らずの痛みや違和感から片側だけで食事をする習慣がつくと、顎の筋肉や関節に偏った負担がかかり、顎関節症のリスクが高まります。

炎症の波及

親知らず周囲の炎症が広がり、顎関節やその周辺の組織に影響を及ぼすことで、顎関節症の症状を引き起こすことがあります。

親知らずの抜歯と顎関節症のリスク

親知らずの抜歯自体が顎関節症の原因となることは稀ですが、以下のような状況でリスクが高まる可能性があります。

長時間の開口

抜歯手術中に長時間口を大きく開けていると、顎関節や筋肉に負担がかかり、術後に痛みや開口障害を感じることがあります。

術後のケア不足

抜歯後の適切なケアを怠ると、歯茎の傷から炎症が広がり、顎関節に影響を及ぼすことがあります。

これらのリスクを避けるためには、術前の十分な説明と術後の適切なケアが重要です。

顎関節症の主な症状と原因

顎関節症の主な症状は以下のとおりです。

  • 顎の痛みやだるさ・・特に食事や会話時に感じる
  • 口の開閉時の異音・・カクカクとした音やクリック音がする
  • 口の開けづらさ・・指3本分(約40mm)以上口を開けられない

これらの症状の原因として、以下が考えられます。

  • 噛み合わせの問題・・不正咬合や歯の欠損など
  • 習慣的な行動・・歯ぎしりや食いしばり、片側咀嚼など。

顎関節症の治療法

顎関節症の治療法は症状の程度や原因に応じて異なります。主な治療法を以下に紹介します。

セルフケア

初期の顎関節症では、非侵襲的な方法が推奨されます。具体的には以下の手法があります。

  1. 生活習慣の見直し・・片側咀嚼や歯ぎしりなどの習慣を改善します。
  2. ストレッチやマッサージ・・顎周辺の筋肉をほぐし、痛みを軽減します。
  3. 温熱療法・・ホットパックなどで顎を温め、血流を改善させます。

ナイトガードの使用

歯ぎしりや食いしばりが原因の場合、就寝時に装着するマウスピースが有効です。これにより、関節や筋肉への負担を軽減できます。

薬物療法

痛みや炎症が強い場合には、消炎鎮痛剤や筋弛緩剤が処方されることがあります。

親知らずの抜歯が必要なケースと注意点

親知らずが顎関節症や口腔内の健康に悪影響を及ぼす場合、抜歯が推奨されることがあります。具体的なケースは以下のようなものです。

不正咬合を引き起こしている場合

斜めや横向きに生えた親知らずが噛み合わせに悪影響を及ぼしている場合は、抜歯が必要です。

炎症や感染が生じている場合

親知らず周辺の歯茎が腫れている、または膿が出ている場合、早めの抜歯が求められます。

隣の歯を圧迫している場合

隣接する歯を押すことでダメージを与え、虫歯や歯周病の原因となる場合も、抜歯を検討します。

抜歯時の注意点

  • 抜歯後は、指示された期間安静に過ごすこと。
  • 出血を抑えるため、抜歯当日は激しい運動を避ける。
  • 適切な歯磨きと洗浄で、術後の感染を防ぐ。

親知らずと顎関節症の予防方法

親知らずや顎関節症の問題を未然に防ぐために、日常生活での注意が必要です。

定期的な健診

親知らずが問題を引き起こす前に、歯科医院での定期健診を受けましょう。レントゲン撮影で親知らずの位置や状態を確認し、他の歯への悪影響がある場合は抜歯を検討することが重要です。

バランスの取れた噛み方

片側咀嚼を避け、左右均等に噛むことで顎関節への負担を減らせます。

ストレス管理

歯ぎしりや食いしばりはストレスが原因となることがあります。リラックスする時間を意識的に作りましょう。

正しい方法で歯磨きを行う

歯垢を残さないように丁寧に歯磨きする必要があります。親知らず周辺を清潔に保つことで、虫歯や炎症を予防できます。

まとめ

親知らずと顎関節症には深い関連性があり、親知らずが正常に生えていない場合、噛み合わせのズレや炎症が顎関節症を引き起こすリスクがあります。

親知らずの抜歯が必要かどうか、また顎関節症の治療が必要かは、歯科医師との相談が必要です。定期健診を欠かさず、早期発見・早期治療に努めることで、お口の健康を保ちましょう。

この記事の監修者
医療法人真摯会 クローバー歯科・矯正歯科 あべの天王寺院
院長 永井 伸人

徳島大学 歯学部卒業卒業。日本口腔インプラント学会。日本顎咬合学会。

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クローバー歯科・矯正歯科あべの天王寺院

大阪矯正歯科グループ大阪インプラント総合クリニック