クローバー歯科・矯正歯科 あべの天王寺院 歯科医師 永井 伸人
歯周病は、一般的にも浸透している疾患ですが、実は40代後半の約半数の人が歯周病の中度の状態を発症していると言われています。
歯周病は静かに進行する
喫煙やストレス、糖尿病や心筋梗塞、肺炎などの基礎疾患がある方は、歯周病が大いに関係すると報告されています。感染症の一つです。近年の研究により、早産を起こしてしまう原因の一つに歯肉炎は関連があると言われています。ただ、歯周病を治療する薬は存在しません。
意外と成人の方を対象に歯周ポケットの深さを調査すると、40代後半からの年代で、約半数もの人が4mm以上の歯周ポケットになっている状態と判明しました。4mmは少ないと思われるかもしれませんが、口腔内で4mmの部分がある歯周ポケットは、歯周病としては中度です。
早めに歯科医院へ通院し治療を受けると、歯周病の炎症の進行は治まりますが、歯磨きやフロス、歯間ブラシを怠ると歯周病は進行します。歯周ポケットの深さが6mmほどになれば歯周病としては重症に悪化し、歯科医師による処置を行わなければ、歯槽骨が痩せてしまい、歯が抜けるという症状を引き起こす原因となります。
歯周病の進行の仕方
●歯ぐき(歯周組織)に歯周ポケットができた状態
●歯ぐきがやせてしまう
●歯茎の締まりがなくブヨブヨしている
●食べかすが歯に挟まる
●口臭・噛みにくさなどがある状態
●歯槽骨がやせてしまい、歯根が出てグラグラする状態
●支えがなくなれば歯は抜けやすくなります
歯周病やむし歯になると着色汚れにもつながる
歯や歯肉の状態が悪い、着色汚れが付くというイメージはあまりないかもしれません。歯みがきが不十分で磨き残しがあれば、食べかすが歯の表面に付着し、そこで菌に感染し、繁殖すると歯垢(プラーク)になります。多い歯垢がブラッシングで落とせない時、それは歯石になります。
歯石を放っておくと、歯肉で歯周炎が進行するばかりか、口臭の原因になりえるものです。除去するには、歯石はオーラルケアで落とすことができず、歯科衛生士によるクリーニングを受診することが必要です。
また、虫歯はミュータンス菌が食べかすをもとに酸を出し、歯のリン酸やカルシウムなどのミネラル成分を溶かしていきます。この状態を脱灰と呼びますが、通常ならば、食後の歯磨きでで中性に戻すこと(再脱灰化)が可能です。ただ、口腔内の状態が悪ければ再脱灰化は行われず、歯の表面の輝きがなくなり、黄ばんできます。歯周病や虫歯、歯石によって、歯の白い色が失われていき、口腔内は不健康になります。
歯周病とはどんな病気かに関するQ&A
歯周病の進行が止まらない場合、歯周ポケットが深くなり、歯槽骨が痩せてしまい、最終的には歯が抜ける原因となります。
初期は歯周ポケットの形成、中期は歯茎の痩せ、口臭、噛みにくさなど、末期は歯槽骨の減少や歯のグラグラ感、抜けやすさなどが特徴です。
これらの状態は歯周病の進行を助長し、一方で歯周病はこれらの基礎疾患のリスクを高めると報告されています。
まとめ
たかが歯周病と侮ってはいけません。歯周ポケットからの出血や腫れ、膿を放置すると、全身の健康にも影響します。歯周組織の健康を保つことは、お口の健康のみではありません。食べ物を咀嚼したら、毎日歯ブラシ以外にフロスなどでケアを行いましょう。痛みがなくても気になる方はクリニックに通院し、定期健診及びメンテナンスを受診し、歯肉炎になっていないかのチェックや診断ををドクターに行ってもらうことを大切にしましょう。