クローバー歯科・矯正歯科 あべの天王寺院 歯科医師 永井 伸人
歯周病になると歯が自然に抜けてしまうといわれても、歯が自然に抜けるなんて信じられない方も多いと思います。歯周病が進行するとどうして歯が抜けてしまうのかについてご説明します。
目次
歯周病で歯がグラグラし始めたらどうしたらいい?
歯周病が進行してグラグラになってしまった歯は、既に歯を支える骨が溶け始めて、歯をしっかりと支えることが難しくなっています。歯周病治療をしても、既に失われた組織は元に戻りませんので、歯のグラグラを元に戻すことは難しいでしょう。
歯周病で歯がグラグラになってしまった場合、隣の歯がグラグラになっていなければ、レジン(歯科用プラスチック)で隣の歯に接着して、グラグラの歯を支えて応急手当をするという方法もあります。それも出来る場合と出来ない場合がありますので、担当医にご確認ください。
歯周病で歯が抜けてしまったらどうしたらいい?
歯が抜けた後の治療は、ブリッジ、入れ歯、インプラントの3種類です。どの方法で治療をするかの相談も必要ですが、必ずしなければならないのは、歯周病の治療です。
歯を歯周病で失ったということは、お口全体に歯周病菌が多く、歯周病菌を減らして炎症を抑え、歯周病の進行を止める治療を受ける必要があります。
歯周病治療には段階があり、初期の歯周病では3ヶ月に1度程度定期健診にお越しいただき、歯周病検査(歯周ポケットの深さ・歯茎からの出血の有無・歯の動揺の有無等)を行って、歯周病の進行をチェックし、その後、歯のクリーニングを行います。
中度以降になると、専門的に歯周病の治療を行う場合もありますし、外科的処置が必要になる場合もあります。中度以上の歯周病の方は、担当医と十分に話し合って、グラグラしている歯を残せるのか、今後の治療はどのように行うのかをお決めください。
歯周病で歯がグラグラになるまでの経緯
歯がグラグラし始めるのは、かなり歯周病が進行してからです。歯周病は元々サイレントディシーズとも呼ばれ、自覚症状なしに進行していき、気づいた時にはかなり進行しているというパターンが多いのです。
歯周病の一番初めの症状は歯肉炎から始まります。歯面に歯垢が残ったままになると、歯垢の中で細菌が増殖します。特に歯と歯茎の間の溝の部分(歯周ポケット)に歯垢が増えると、細菌は歯茎の組織を破壊していき、歯周ポケットがどんどん深くなるという悪循環になります。
歯周ポケットの奥は、歯ブラシの毛先が届かないので、歯垢がついたままになり、やがて歯石に変わります。歯科医院の定期健診を受けない限り、歯周ポケット内の歯垢や歯石を取り除くことは出来ません。
1.歯肉炎
歯周病菌の出す毒素によって歯茎が少し腫れていますが、鏡で見ても腫れているかどうかご本人は気づかない程度の腫れです。歯磨きで出血する方もおられます。
2.軽度歯周病
歯周ポケットの深さが3~4mm程度になると、歯茎の炎症はより強まり、歯茎が歯肉炎の時よりも赤く腫れて、歯磨きすると歯茎から度々出血するようになります。
3.中度歯周病
歯周ポケットの深さが4~5mm程度になると、歯茎の炎症はより強まり、歯磨き時の歯茎からの出血が増え、歯茎から膿が出る方もおられます。歯が少しグラつき出し、はっきりとした自覚症状が出るのはこのあたりからです。
また、歯茎が歯周病菌の出す毒素で破壊されてしまい、退縮して歯が長くなったように見えます。今まで歯茎に埋まっていた部分は象牙質と呼ばれる部分で、象牙質が歯茎から露出すると、知覚過敏が起こりやすくなります。また、虫歯のリスクも上がります。
4.重度歯周炎
歯周ポケットの深さは6mm以上になると、かなり重度の歯周病です。この段階では歯が埋まっている歯槽骨が溶けてしまい、歯のグラつきも大きくなり、歯が抜けてしまうこともあります。
歯茎は真っ赤に腫れて出血がひどくなり、歯茎から膿が出て口臭の原因になります。歯茎の退縮による象牙質の露出で、知覚過敏もひどくなり、虫歯のリスクも上がります。
歯周病の予防方法は?
歯周病予防の基本は、歯面に歯垢、歯石を残さないことです。お口の中を清潔にすることから始めましょう。
- 歯科医院での定期健診(クリーニング)
- 歯みがきアイテムにデンタルフロス、歯間ブラシをプラスする
- 歯ぎしり・食いしばりがあれば対策する
- 喫煙の習慣があれば本数を減らす
- 生活習慣病は出来るだけ改善させる
歯周病は歯がグラグラになって抜けるのかに関するQ&A
歯周病が進行して歯がグラグラになってしまった場合、失われた骨組織は元に戻らないため、完全に元に戻すことは難しいです。隣の歯がグラグラしていなければ、レジンで隣の歯に接着し、応急的な対処をする方法もありますが、担当医に相談してください。
歯が抜けた後の治療方法は、ブリッジ、入れ歯、インプラントの3つがありますが、治療の前提として歯周病の治療が必要です。歯周病の進行を抑え、炎症を減らす治療が必要です。
歯周病の治療は段階的に行われます。初期の歯周病では3ヶ月に1度の定期健診で歯周病検査を行い、歯のクリーニングを行います。中度以上の歯周病の場合は専門的な治療が必要になることもあります。十分に担当医と相談し、治療方針を決定しましょう。
まとめ
歯周病は重度になると歯がグラグラになって抜けてしまいます。初期の段階で治療が出来れば、歯茎や骨を失なう前に歯周病を治すことが出来ますので、出来るだけ早く発見することが大事です。
しかし発見が遅れ、既に歯がグラグラしている場合は、直ぐに治療を始めないと歯周病が進行して歯を失うことになってしまいます。治療をすれば歯周病の進行は食い止められる可能性がありますので、まず歯の定期健診で歯周病検査をお受け下さい。