クローバー歯科・矯正歯科 あべの天王寺院 歯科医師 永井 伸人
子供の指しゃぶりが歯並びを出っ歯にしてしまうのをご存じでしょうか?そのうちなおると楽観視している保護者の方もおられるでしょうが、歯並びが悪くなるのでなるべく早くやめさせたいものです。
目次
指しゃぶりを放っておくと歯並びが悪くなる
お子さんの指しゃぶりが2歳~3歳くらいになっても続いている場合、保護者の方は無理やりにでもやめさせなければと思われるかもしれませんが、気長に対応していく必要があります。
しかしお子さんが指を吸う力は大人が思っているよりも強く、長期間にわたって指しゃぶりを続けていると、歯並びや顎の形、顔の形にまで影響が及ぶことがあります。
指しゃぶりによって歯にどんな力がかかって歯並びはどうなる?
指しゃぶりによって指が前歯を押し続け、前歯は上前方に押し出されます。同時に下の前歯は下後方へと押さえつけられます。
その結果、上の前歯が出っ歯になったり、奥歯を噛んだ時に上下の前歯が噛み合わない開咬と呼ばれる不正咬合を起こしやすくなります。
そのまま指を強く吸い続けると頬が奥歯を内側に押す力が働いて、狭窄歯列弓(きょうさくしれつきゅう)という歯のアーチの横幅が狭くなる状態になります。アーチが狭くなると歯が一列に並びきれずにガタガタになるなど、様々な問題を引き起こします。
子供の指しゃぶりは大人になっても影響が出る
子供の時に指しゃぶりをしていた子が大人になると、どのような影響が出るのでしょうか?小学校低学年くらいまで指しゃぶりを続けていると、上下の前歯が噛み合わない開咬になることがあり、開咬の方は前歯で食べ物を噛み切ることが出来ません。
更に、開咬でできた空間に舌を入れる癖がついてしまうと、矯正治療を行ってもなかなか開咬が治りません。唇を閉じにくいという弊害もあって、口呼吸になってしまい、お口の中が乾くことで虫歯や歯周病のリスクが高まり、ウイルスが喉に直接入ってしまうなど、免疫の面でも悪影響が出ます。
子供の指しゃぶりを放っておくと、大人になっても様々な問題が起こりますので、小さいうちに指しゃぶりの癖を出来るだけなおしておきたいものです。
指しゃぶりで悪くなった歯並びの治療方法
指しゃぶりが原因で出っ歯や開咬になってしまったお子さんの歯並びを治すにはどのような治療方法があるのかご説明します。
子供の出っ歯の治し方
出っ歯のお子さんの最適な治療時期は6歳頃で、7歳以上の場合はすぐに治療を始める必要があります。9歳以降は大人の矯正治療と同じ方法になります。
矯正治療に使う装置は、小児矯正では床矯正という顎を広げるための装置を使い、その後ワイヤー矯正で治療を行います。
成人矯正ではワイヤー矯正、裏側矯正、マウスピース矯正の中から選ぶことが出来ます。
子供の開咬の治し方
開咬の治療には小児矯正では床矯正の装置を使い、その後ワイヤー矯正に移行するケースがあります。
舌で前歯を押したり、舌を突き出したりする癖のあるお子さんは、舌の癖や位置の改善のために口腔筋機能療法(MFT:ミオファンクショナルトレーニング)を行う場合もあります。
成人矯正では開咬の治療にはワイヤー矯正が一般的ですが、裏側矯正、マウスピース矯正の中から選ぶことが出来ます。
指しゃぶりは無理にやめさせると別の癖が出ることも
指しゃぶりを無理にやめさせることは、お子さんにとって大きなストレスとなります。お子さんを叱りつけて無理やり指しゃぶりをやめさせた結果、自分で自分の髪の毛を抜いてしまったり、爪を噛んでボロボロにしたりと、別の癖が出る場合があります。
そのため、出来るだけ遊びなどに夢中になる時間を作ってあげて、無理なくやめさせられるようにしたいものです。
子供の指しゃぶりをやめさせるには?
お子さんの指しゃぶりの癖をやめさせるには、お子さん側に指しゃぶりをやめようという気持ちが生まれる必要があります。無理にやめさせると別の悪癖につながるだけという可能性もありますので、子供を不安にさせないようなアプローチをするようにしましょう。
外で全身を使って遊ばせたり、室内でも両手を使って遊ばせるようなことをするなど、指しゃぶりをしているお子さんの注意を別のことにそらしたり、指しゃぶりをしていない時はほめてあげるなども大切です。それを少しずつ定着させていき、様子を見ながらすすめていきます。
まとめ
乳歯が永久歯に生え変わる5歳~6歳くらいまでに指しゃぶりがなおれば、歯並びへの影響は少なく済みます。なかなか治らない場合は、生活環境の中に指しゃぶりを続ける原因がないか見直すとともに、小児科医や保育園・幼稚園などの専門家に相談してみてもよいでしょう。